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令和7年1月31日NEWS RELEASE No.2501

ヒガシマル醬油株式会社 / 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

醤油醸造用の大豆新品種「たつひめ」、小麦新品種「たつきらり」を開発

 ヒガシマル醬油株式会社(本社:兵庫県たつの市、社長:竹内宏平、以下、ヒガシマル醬油)と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(本部:茨城県つくば市、理事長:久間和生、以下、農研機構)は、醤油醸造に適した大豆新品種「たつひめ」と小麦新品種「たつきらり」を共同研究により開発しました。
「たつひめ」は病害に強い多収品種であり、早生(わせ)の多収品種である「たつきらり」は現行品種で晩生(おくて)の「ゆめちから」との作期分散が実現できるため、原料の安定生産につながると期待しています。

     
  • 大豆「たつひめ」
  •  
  • 小麦「たつきらり」
  • 図 たつの市で栽培される大豆「たつひめ」(左)と小麦「たつきらり」(右)

1.育成の経緯
ヒガシマル醬油では、素材の良さを生かす日本料理には欠かすことのできない高品質な淡口(うすくち)醤油と、その淡口醤油の良さを生かした多くの商品を提供してきました。
自然なおいしさを通じて「健康と長寿」そして「楽しく、豊かで、安全な食生活」に貢献する。そのためには「原料の産地からお客様の食卓まで」責任を持つ。これが当社の思いであり、原料しかも種子の段階から関わって、地産化に取り組んで参りました。
平成10年には醤油の主原料である小麦の全量国産化を達成し、さらにより高品質な原料を求めて、地元兵庫県播磨地方の生産団体と共に「契約栽培による原料の地産化・見える化」に取り組むなど、お客様においしさと食の安心安全をお届けするため醸造原料の種(品種)から関わって醤油の品質向上に努めています。
おかげさまで平成20年には「農商工連携88選」に認定され、平成22年には「農商工連携ベストプラクティス30」に選定。また、平成29年には「たつの市集落営農連絡協議会」が「地産地消等優良活動表彰」において農林水産大臣賞を受賞されるなど、この取り組みは全国で高く評価されています。
醤油に適した品種には、成分的にたんぱく質の含有量が高く、かつたんぱく質と糖質がバランスよく含まれていること、醸造用加工適性が高いことが求められます。
さらに、「原料の地産化」を推し進めるためには、地域の風土に適応して栽培がしやすく、収量性が高い品種であることも重要です。その取り組みの一環として、当社は、醤油の主原料である大豆(令和元年度から)、小麦(令和2年度から)について、農研機構との共同研究により、醤油醸造に適した高品質な品種の開発を進めてきました。
現行の大豆品種「たつまろ」は、倒れにくい特性と莢(さや)がはじけにくい特性から、収穫ロスが少なく栽培しやすい品種ですが、土壌病害抵抗性が十分でないため、改良が望まれていました。現行の小麦品種「ゆめちから」は、たんぱく質含有量の高い品種ですが、西日本地域で栽培すると成熟期がかなり遅くなる特性であるため、梅雨時期にかかり降雨による品質低下が懸念されます。さらに、収穫時期が遅くその後の大豆の播種(はしゅ)が遅れることも、醤油原料の安定生産を考える上での課題でした。
2.大豆新品種「たつひめ」の特徴
<概要>
大豆新品種「たつひめ」は、高たんぱくで醤油醸造に好適な多収品種です。ダイズ茎疫病耐性を付与したので、病気に強く、安定多収が見込めます。
<詳細>
大豆新品種「たつひめ」は、倒れにくい特性や莢がはじけにくい特性を持ち、現行品種「たつまろ」よりやや早熟で、多収の品種であり、近畿、中国、四国地域での栽培に適しています。土壌病害の一つであるダイズ茎疫病に対する抵抗性は現行「たつまろ」より強く、種子の大きさやたんぱく質含有量は現行「たつまろ」と同程度です。また、醤油加工適性試験では、「たつひめ」を原料にした醤油の品質は現行「たつまろ」と同等以上でした。「たつひめ」の栽培特性は現行「たつまろ」に似ているので、現行の栽培方法のまま無理なく導入が可能で、品種置き換えにより多収化や安定生産に寄与することが期待されます。
3.小麦新品種「たつきらり」の特徴
<概要>
小麦新品種「たつきらり」は、高たんぱくで醤油醸造に好適で、パン用にも適しています。現行「ゆめちから」より多収で収穫時期が早まるので、次作の大豆の適期播種が可能で安定多収化が見込まれます。現行「ゆめちから」との2品種体制で気象リスク分散、作業時期の分散も可能です。
<詳細>
小麦新品種「たつきらり」は、高たんぱくで醤油醸造に好適で、パン用にも適しています。兵庫県たつの市での現地試験では、現行品種「ゆめちから」より収穫期が10日早く、収量は1割程度多収でした。たんぱく質含有量は、たんぱく質高含有品種である現行「ゆめちから」とほぼ同程度の高い値が得られました。現行「ゆめちから」よりも早く収穫作業を終えられることにより、小麦栽培後の大豆栽培に向けた準備期間に余裕が生まれます。そのため、大豆の播種作業を適期・好条件で実施できる可能性が高まり、大豆生産の安定化と多収化にも寄与することが期待されます。さらに、作期の異なる「たつきらり」と現行「ゆめちから」の2品種体制を取ることで、気象リスクを分散できるほか、追肥や収穫などの作業時期の分散も可能となるので、担い手不足対策の一助にもなると考えています。
4.今後について
地元での実生産開始に向け、産地品種銘柄化や種子生産に取り組んでいます。
「原料の産地からお客様の食卓まで」責任を持つ、この当社の思いを持ち続けることで、より高品質な原料をできる限り多く求めて、「原料の地産化」の取り組みを、これからも末永く続けて参ります。

問い合わせ先

お客様からのお問い合わせ先
ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 TEL:0791-63-4635
受付時間 9:00~17:00 (土・日・祝日・夏期休暇・年末年始を除く)
品種に関する問い合わせ先
研究担当者:
「たつひめ」 農研機構西日本農業研究センター 中山間畑作園芸研究領域 グループ長補佐 髙田吉丈
「たつきらり」 農研機構西日本農業研究センター 中山間営農研究領域 上級研究員 伴雄介
広報担当者:
農研機構西日本農業研究センター研究推進部研究推進室 広報チーム長 阿部弘実
お問い合わせフォーム:https://www.naro.go.jp/inquiry/index.html